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「さまよう刃」

さまよう刃」 東野 圭吾
蹂躙され殺された娘の復讐のため、父は犯人の一人を殺害し逃亡する。「遺族による復讐殺人」としてマスコミも大きく取り上げる。遺族に裁く権利はあるのか? 社会、マスコミそして警察まで巻き込んだ人々の心を揺さぶる復讐行の結末は!?
これはわりと最近出たので書店でみかけたことがある人も多いんじゃないでしょうか。未成年による凶悪犯罪と遺族による復讐。更正と社会復帰に重きを置いた少年法と、割り切れない遺族の激情。結論が出ない問題と救われない結末を覚悟して読破。約3日。

描かれる事件の犯人は、間違いなく人間の屑であり、同時に身勝手で視野の狭い図体がでかいだけの「子供」である。弁護のしようもなく「鬼畜」「人外」どんなコトバで罵倒しようとも足りない生き物であり、そんな悪魔に愛する娘を奪われた父親が、憎悪に駆られた復讐に乗り出すのは自然であり、疑問は感じられない。

本書では、そうした共通の「感情」が、父親が逃亡中出会う女性や、彼を追う警察官、マスコミによる報道と、さまざまなところで表出するところを淡々と描いている。
「感情は理解できるが、復讐の容認は法秩序の崩壊に繋がる」とか、「憎しみは何も生まない、故人は帰ってこない」とか、「応報刑ではなく目的刑を」とか、そんなことは誰でも言えるが、そこには常に「当事者でなければ」という但し書きがつく。

復讐に燃える父親の猟銃、犯罪者として彼を追う警察官の国家権力、週刊誌やテレビに携わる人間の言葉や映像など、事件をとりまく全ての人の「刃(やいば)」は、結末に向けて、理性と抑えきれない情動との間でさまよい続ける。

作者の目的は、この永遠の課題について主観や意見を述べることでなく、読者をただ揺さぶることだろう。決して遠い世界の出来事でなく、身近に起こりうる悲劇を通して揺さぶるのだ。そのことは、法により父親が裁かれる法廷シーンが本書には存在しないことからも明らかではないか。

この悲劇にしばしの間身を投じて、自らの理性と情動のバランスを揺さぶってみたい方には本書をお薦めしたい。

・・・なんて、ちょっとレビューっぽい書き方をしてみました。

さまよう刃
東野 圭吾

朝日新聞社 2004-12
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